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蒟蒻問答、吉田朗が過去作を順不同でふれていきます。

前回の原子爆弾とロッキングホースをモチーフにした作品から、原子爆弾つながりということで、キノコ雲をモチーフにして制作した犬張り子シリーズの作品に触れてみます。 
                                   

No.62
犬張り子 [ Atomic Cloud ]

「犬張り子 [ Atomic Cloud ]」/ ''Inu Hariko [ Atomic Cloud ]'', 2011, FRP based sculpture

犬張り子 犬であり張り子である。 刺青 一度入れると、一生背負う。
東日本大震災後の日本の状況を改めて見返す中で、新たな意味を見いだし震災後に制作しました。日米関係を含ませて日本という国を「主人に従順な犬」、「中身のない張り子」と揶揄しながら、表面には洋金粉を用いてキノコ雲や放射状の拡散線、髑髏をペイントした作品です。

「犬張り子 [ Atomic Cloud ]」/ ''Inu Hariko [ Atomic Cloud ]'', 2011, FRP based sculpture

「犬張り子 [ Atomic Cloud ]」/ ''Inu Hariko [ Atomic Cloud ]'', 2011, FRP based sculpture

犬張子シリーズは2006年ごろから、以前にこのブログで触れた「錦帯橋と鷹」バージョンからはじまり、大小いろいろなサイズで多くの数を制作してきました。多数の犬張り子を作っていく中で、「なんかずれていく感じ」がしてこのまま作っていていいのかなという疑問が湧いていきました。

初代は「岩国の基地問題と犬、張り子」という要素を丁寧に組み合わせて制作したのですが、作り続ける中で「犬張り子と日本に対するネガティブな要素やアメリカナイズ」といった感じに組み合わせる事象のピントを少し緩くしていったように思います。そうして犬張り子のという形状のベースは変わらずに、組み合わせる事象を大まかにしたことで、犬張り子の可愛さが強く前に出てしまい、自分が込めたアイロニックな視点ではないところがフォーカスされていき、自分が想定した見られ方がしていないと感じるようになりました。

「可愛いFRPの張り子を作る作家」になってしまってはいけないと考えて、これは終わったシリーズにしようと、しばらく封じました。可愛さを外して、ややハード目なイメージの仏像と刺青のシリーズに行ってみたり、やはり可愛さは認めていいんではないかと考え直して情操教育シリーズに行ってみたりと、自分の仕事をいろいろと試行錯誤してみました。

今、振り返ってみると、いろいろな作品を作る中で犬張り子のシリーズは一つ自分の評価軸というか基準点にしていた作品だったように思います。好きなのに、気になるのに避けてしまう小学生的恋愛風というか、、これは違うか。

そうしていろいろと他の道を模索してみたのですが、2011年の震災と原発事故などあった後に、この「犬張り子 [ Atomic Cloud ]」と 「犬張り子 [Occupied Japan]」(次回で触れます)は制作することにしました。この「犬張り子 [ Atomic Cloud ]」を作ってみて、さらに具体的に事象を二発の原爆と原発にフォーカスし、それをギフトフロムアメリカという感覚で描いたのが[Occupied Japan]になります。

次回は、この「犬張り子 [Occupied Japan]」に触れて張り子2点を総括してみようと思います。

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