ユカリアートブログ YUKARI ART BLOG

現代美術のギャラリー、ユカリアート/YUKARI ARTのメンバーが、アートにまつわるあれこれを綴るブログ。

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2011.2.14     by:

先週の土曜日、ご好評につき会期を延長していた「ゴミとITとわたし」展が無事終了いたしました。その日はなんだか不思議な1日でした。

雪の降る静かな朝だと思って目覚めてみると眠っている間にエジプトのムバラク大統領が辞任しているではありませんか!30年も続いた政権を民衆の力が倒したという歴史的な出来事です。なんとエジプトは全人口の50%以上が25歳未満の若者だとか。少子高齢化に悩む我が国ニッポンに住む私は「若いエネルギーってすごいな、いいなあ」などと考えながら家を出ました。そっ外が寒い。。。さすがにこれではどなたもいらっしゃらないだろうと思いながらギャラリーのドアをあけると・・・まるで通常の土曜日のように足を運んでくださるお客様の姿!日本人もたくましいではないですか(笑)あっと言う間に5時になり、作家が集まって搬出開始。1ヶ月前のことを遠い昔のように感じながら作家達と会期中のいろいろなことを話しました。展覧会の終わりにはいつも長年通った学校を卒業するような寂しさを感じます。作家ともしばしのお別れの気分になるんです、おそらく次の日には何かしらの連絡をするに決まっているのに(笑)

この1月、2月の寒い季節にお越しくださった皆様方、本当にありがとうございました。

さて展覧会は終了ましたが、出品アーティストの泰平をご紹介致します。(いしかわかずはるはまた別の機会に!)

泰平は2003年頃から「インターネット時代のアート」をテーマに作品を発表しはじめ、ネット上のプロジェクトと並行してギャラリーや美術館など実空間での展示も行なっている作家です。

私と泰平との出会いは2006年。後に建築家の安藤忠雄さんがコレクションしてくださる「IT」という本の背表紙を大量に使った作品が発表された時でした。インターネットをテーマにしはじめた当初は、ネット上で行ったプロジェクトを美術作品として発表する試みも行っていたそうですが、実空間でコンピュータそのものや関連プロジェクトを展示することに違和感を感じることが多くなり、徐々にインターネット関連の記号を一切排除しつつもそのダイナミズムを表現する方法を模索するようになりました。「本棚」シリーズはそうした彼の新しい試みをもとに発表された作品です。



以前にもこのブログで書きましたが、例えば美大の卒業制作展やアートイベントなどに新しい才能を発掘しに行くとき、まず私は作品だけを拝見し、その上ではじめてファイルを見たりアーティストと話してみたりします。まずは「作品ありき」ということ。

本棚の作品は色合いもカラフルでとても目をひきました。もちろん興味を持ったから泰平に話かけました。でもご本人様(!)は作品よりもっとおもしろかった。私にとっては「作品そのもの」よりも彼が今後「何かをやらかしてくれそうな匂い」の方に賭けてスカウトした珍しいケースです。

そもそも私はアナログ人間ですから、そんな私が主宰するユカリアートのアーティストはやはり基本はアナログ系、時代にそぐわない肉体労働で作品を生み出している美しくも汗臭い(笑)方々です。ではなぜ泰平と一緒に何かやってみようと思ったのか?

まず、頭の中デジタル(笑)の泰平は思いっきり身体を使って作品をつくるからです。実はDIYが似合う男、泰平

例えば「IT」。本の背表紙のみを1冊ずつ、細くほそーく切って1枚1枚それぞれの裏にパネルのようなものを貼って・・・最終的にはそれらひとつひとつを順番に巨大なベニヤの上に貼って・・・という気の遠くなるような作業の繰り返しです。今回の展覧会で発表したのはコタツを積み重ねたインスタレーション。でもコタツをそのまま展示したのではギャラリーが熱くなりすぎてしまい危ない(笑)ので、わざわざ熱が出ないギリギリのところまでひとつひとつのコタツの電圧を下げる細工をしてくる。身体を伴う作業も淡々とこなしてしまうところが彼のおもしろさです

そしてテーマこそ「インターネット時代におけるアート」ですが、彼が表現したいのはアナログでもデジタルでもない、人間に共通する潜在意識のようなものではないかと思うのです。今展をご覧になれなかった方は泰平の今後に乞うご期待くださいませ。

さて、「コタツ」作品の解説を少し。

かつて「未来派」と呼ばれたアーティスト達は絵画にNIkeのロゴマーク(!)のような矢印を描くなどして、産業革命で劇的に変化する社会の様子や世の中のスピード、その時代に導入された機械の素早い動きなどを美術作品の中で表現しようとしました。でも実際の動きを作品として表現するのにはやはり限界があります。それを「美術独特の不可能性」と考える泰平は「それ(不可能性)こそが美術のおもしろさである」と感じています。

「インターネット」の時代である現代は産業革命の時と同じ、もしくはそれ以上に激動の時代です。「『未来派』全盛期と比べ、より複雑化した現在の社会背景や美術表現の中で、その『不可能性』はより高度なものに発展している」と泰平

彼にとって文庫本やコタツという一見インターネットとは全く結びつかないものを素材にして現在の世界を表現することは、絵画に矢印を描くなどして素早い動きを表現しようとした「未来派」と同じようなことなのです。

「コタツ」というのは彼の目には「文化的デジタル」な物としてうつるそう。コタツの伝熱部分で繰り返されるオンとオフの動きはまさにデジタルだと言うのです。言われてみれば確かにそうかもしれませんね(笑)だからこそ、日本人にとってはなじみがあり、懐かしさを感じさせるコタツを使って「一見冷淡で無機質な印象をあたえる『デジタル』」を表現しようとしているんだとか。さらにそのオン、オフの信号が連なると浮遊するデジタル空間?が思い起こされ(私の中ではドラえもん四次元ポケットのイメージですが)それは「深海の魚や、川辺のホタル、宇宙空間の探査機などに通ずる儚い風情がある」とのこと。

私にとって「デジタル」的なものは決して温かみのある存在ではありません。でも彼の謎かけのような作品を読み解いていくと、泰平はそれとは別の思いを抱いていることが垣間見えてきます。

つくづく、アーティストって色々なことを考えるものですね!


EXHIBITION

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淀川テクニックonline展「モルディブってどこ?」~淀川テクニックinモルジブ共和国~・序章 2012年4月21日~6月3日開催

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