蒟蒻問答、吉田朗が過去作を順不同でふれていきます。今回は2006年の第1次安倍内閣発足をテーマにした作品でいこうと思います。

作品No.37
連載彫刻 vol.14  政犬交代

連載彫刻 vol.14 「政犬交代」/ Serialized sculpture vol.14 '''Change of government'', 2006, Super sculpey lacquer paint

2006年 9/27の朝日新聞朝刊1面の 安倍内閣発足 の記事より想起。真空パックにした新聞記事と共に展示。

小泉政権から引く継ぐ形で発足した安倍新政権。集団的自衛権、外交問題などアメリカ追従色は一層強まっていくと思われる。首輪とホワイトハウスを配し日米関係を凝縮。小泉前首相の、職務を終えた晴れ晴れとした顔が印象に残り、片手を上げ足早に立ち去る姿を再現し後方に配した。

彫刻は制作に時間がかかり、 時間軸に対する反応が弱い。社会ニュース的要素を作品に取り入れていくと、作品が完成する頃にはニュースが風化してしまう。 そんなことを感じていて、そこに対して、反応速度を最優先にして、サイズを小さくし30センチ四方のキューブに2週間以内の元ネタ新聞記事と一緒に作品を展示するという試みが「連載彫刻」でした。

この作品を制作した頃は自分の中で「現代アートは難解で、社会との接点が乏しく、一般社会と隔絶したところで成立している、そして、社会との接点を大きく取ることに活路があるのではないか」といったことを考えていました。今になり振り返ると、「社会性」と「時事性」という部分を切り分ける必要があったかな?と考えたりもします。

アートと社会性というところに興味があり、Hans Haacke がとても好きな作家だったりします。
社会に潜む問題を顕在化する、それを非常に美しい形でプレゼンテーションする、Hans Haacke の作品はそういったアートなのかなと個人的には認識しています。

社会問題に対する自らの考えを述べる、さらに一歩進めると社会の問題を解決する、このようなスタンスの作家もいます。これはアートと社会活動、政治にも近い形になってくると思うのですが、Joseph Beuys はこちらに近いのかな?と、これまた個人的に感じています。

上記のような社会と作品とのスタンスに対して、「社会で認知された問題を自作に取り込む」という作品もあると思うのですが、「アート作品として成立させるために社会的ソースを利用しているだけなのではないか?」というようにも感じるようになりました。これは自作に対して、また他人の作品に対しても感じてしまうことがあります。このあたりは、まだ自分の中でまとまりきっていないので、この蒟蒻問答などで自作を振り返ったりしつつ、考えを整えたいと思っています。

この作品で犬がモチーフの一つになっています。この作品以前では「平和だと太る」という作品で犬(狛犬)に触れています。この「政犬交代」で、アメリカと日本の関係を「犬」という動物に投影し、この姿勢がこの後に「犬張り子シリーズ」へと展開していきました。

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