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蒟蒻問答、吉田朗が過去作を順不同でふれていきます。前回のmoney plan(e)からの兵器つながりと、最近何かとニュースになっているということで、北朝鮮とミサイルをモチーフにして制作した作品に触れてみようと思います。

No.38
連載彫刻 vol.11  窮鼠の金縛り

連載彫刻 vol.11 「窮鼠の金縛り」/ Serialized sculpture vol.11 ''Binding tight of the cornered rat'', 2006, Super sculpey lacquer paint

連載彫刻 vol.11 「窮鼠の金縛り」/ Serialized sculpture vol.11 ''Binding tight of the cornered rat'', 2006, Super sculpey lacquer paint

連載彫刻 vol.11 「窮鼠の金縛り」/ Serialized sculpture vol.11 ''Binding tight of the cornered rat'', 2006, Super sculpey lacquer paint

2006年 6/20 朝日新聞 朝刊 2面  テポドンかざす刀 の記事より想起。真空パックにした新聞記事と共に2006年7月4日〜7月5日に展示。北朝鮮のテポドン2発射準備は燃料の注入まで完了した。しかし、米ライス国務長官はじめとする外交包囲で四面楚歌の状況が造られた。射程に入る米領アラスカにむけられたミサイルは、ライス長官扮するホッキョクグマに氷づけにされた。

No.39
連載彫刻 vol.11.1  窮鼠からの還暦祝い

連載彫刻 vol.11.1 「窮鼠からの還暦祝い」/ Serialized sculpture vol.11.1 ''Sixtieth birthday celebration from a cornered rat'', 2006, Super sculpey lacquer paint

連載彫刻 vol.11.1 「窮鼠からの還暦祝い」/ Serialized sculpture vol.11.1 ''Sixtieth birthday celebration from a cornered rat'', 2006, Super sculpey lacquer paint

2006年7/5の朝日新聞 夕刊一面 北朝鮮ミサイル発射 の記事より想起。真空パックにした新聞記事と共に2006年7月6日〜7月16日に展示。アメリカ時間の7/4、北朝鮮はミサイルを発射した。独立記念日に当たるこの日は、ブッシュ大統領の還暦を祝う7/6の誕生日会が前倒しで行われていた。北朝鮮のミサイル発射はアメリカにむけられたメッセージであるにも関わらず、日本近海に打ち込まれるというそんな状況を「窮鼠猫を噛む」のことわざのネズミと、ケーキを用いて立体化しました。
 
 
この作品は以前にも触れました、政犬交代と同じ連載彫刻というシリーズで制作した作品です。金正日政権時代で、もう10年以上前の出来事はありますが、核開発とミサイルを用いた綱渡り的な外交という点は、今も昔も変わらないようです。

連載彫刻シリーズは搬入期日が決まっていて、ギリギリまでニュースを待ってそれから一気に制作、というスタイルでやっていました。実際に手を動かしていたのは3日を切るくらいでした。彫刻と時事性という、本来相性の悪い二つを絡め、リアルタイム感を優先させたので、ニュースを予測してA案、B案といくつかの作品プランを用意しておき、ギリギリで決定、一気に制作という感じでした。

そのギリギリで決定というところに、予測の部分も幾分か入ってくるわけで、この時は「北はミサイルが打てない」という予測のもと制作しました。作品テキストにもありますが、窮鼠ということでネズミの着ぐるみをかぶってミサイルを構えた金正日将軍がいて、ライス国務長官の魔法によりミサイルが凍りついてフリーズという構図にしました。

しかし、、、無事に完成させて搬入した次の日、打っちゃいました テポドン 普通に。ニュースを聞いて、これはマズイと思い、ギャラリーに連絡を入れて、7/5に作品を回収、徹夜で作業して翌7/6に差し替え作品を展示しました。「窮鼠の金縛り」の方は2日間しか展示していなくて、ホッキョクグマに扮したのライス国務長官は土台から剥がしちゃったりしたので、展示、現存ともに2日のみというレアな作品になってしまいました。

この作品を制作した頃は、現代アートの難解さを回避するために時事性を取り入れ、「ニュースのわかる」と「作品のわかる」をイコールで結ぶことを意識して制作していました。「わかる」作品を作るということに、なぜか自分の中で使命感めいたものを感じていました。一方で、外的な情報から、あまり自分を通さずに作品化するので、自分の内的なものを表出する作品や、自分の内的なものを表出させつつ、さらにそこに現代社会の業のようなものを映し出す作品(このころは山本竜基さんの作品にそれを感じていました)に憧憬のようなものを抱いていたりもしました。

現在は、この作品を作っていた頃よりも現代アートが社会の中に浸透しているように感じます。それもあってか「わかりやすい作品を作りたい」という欲求(どんな欲求だ?とも思うのですが‥)や使命感は薄れて、作品で「今の日本を切り取る」ことができれば良いのかな と考えるようになってきました。

次回は、ミサイルからの爆弾つながりということで、爆弾とロッキングホースをモチーフにして制作した作品に触れてみようと思います。
 
 
 
肖像権、著作権等についての考え
連載彫刻 vol.8以降関して、政治家等、公人の肖像権は制限される、との考えに基づき制作している。また公人以外の肖像権に関して、一般の漫画表現(スポーツ四コマなど)に認められている肖像権利用範囲と同等と考え制作している。新聞記事は全て引用、コピー等ではなく購入したものを使用している。また、全て出版元がわかる形での掲示を行った。

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