ある大学生から授業の一環で淀川テクニックに質問をもらいました。
とても的を得た質問だったので許可をもらって掲載することにしました。
Q1 淀川テクニックというアーティスト名はとても印象的ですが、名前の由来を教えてください。 A1 2002年頃、僕は村上隆さんというアーティストが主催するGEISAI(ゲイサイ)という若手アーティストの登竜門的なコン ペに半年に一度出展していました。 そして2003年頃「淀川フェスティバル」という淀川河川敷で行われるイベントのために友達と二人で河川敷のゴミを使 って作品を作ってみたところ、落ちているゴミを探しながら作品を作るという行為がとても面白く、その時のGEISAI#5 に「淀川テクニック」というアートユニットとして出展したのが名乗るきっかけです。 Q2 アーティスト活動を行うきっかけはどのようなことがきっかけだったのでしょうか? A2 服飾の専門学校を卒業後、試しに一年程工場で働いてみたのですが、自分のアイデアとセンスで何かを作ってみたい と思い会社を辞めてアルバイトをしながらアーティス活動を始めました。(今から考えるとモラトリアム期間が全然足りな かったんだと思います) その後大阪のギャラリーなどで展覧会をしているうちに様々なアーティストの先輩に影響受けたのですが、今でもヤノベ ケンジさんとの出会いがアート作品を作る上で大きな下地になっています。 Q3 作品を作る際にモットーとしていることはありますか? A3 自分が面白いと思うかどうか。 自分の因果が何なのか。(HUNTER×HUNTERの念に近いかも) 目で見て面白いと思うかどうか。 その作品にストーリー(文脈)があるかどうか。 Q4 出来る範囲でよろしいので、制作過程を教えてください。作品に使う漂流物を探すときのポイントなどもお聞かせください。 A4 ゴミを沢山拾って洗浄し、その中からセレクトしながら作りますが、現地でそのまま作ることもたまにあります。 漂流物やゴミは社会システムから外れたモノなのでとにかく安全第一で取り組みます。 観光地化されてない所によく漂流物が溜まっていることが多いです。 作品によって扱うゴミはそれぞれ形が違うので具体的な扱い方は一言では伝えらませんし、どこに何のゴミを使うかは 作り出して完成してみないと僕にもわかりません。 詳しく知りたい方は大型作品を作る時たまにインターン募集します。(作品制作は誰でも参加できる内容では無いので 興味ある人は事前ご連絡下さい) Q5 これまで作られた作品の中で最も印象に残っている作品は何ですか?その理由もお聞かせください。 A5 2008年にインドネシアのジョグジャカルタで作った「ジョグジャカルタのアロワナ」という作品です。 それまでも何度か海外で制作する機会はあったのですが、制作場所の貧民街のコミュニティで全く言葉が通じなかっ たり、慣れない熱帯の気候と物凄い数のバイクと排気ガスに疲れ切っていたのですが、制作終盤には地元の人たちと も仲良くなり作品を川に浮かべるのを手伝ってもらったり、展覧会のオープニングにみんなが駆けつけてくれたりしたの が印象的でした。 Q6 ゴミハンタープロジェクトはどのような活動を行ったのですか? A6 淀川テクニックが作品を作る為にはまずゴミを集めをする必要があります。 地元の人でも知らないゴミスポットを探し出すのは探検や狩猟に似ていて、地球上で人知れず漂流物が沢山集まって いる場所を探し出し、その場で作品を作り上げることをゴミハンタープロジェクトと呼んでいます。 Q7 最初こそ活動の目的に環境問題は含まれていなかったそうですが、環境問題を前面に出し活動されるきっかけは何で したか? A7 環境問題を全面に押し出しているという訳ではなく、現代アート作品と同時並行でやっています。 当初形だけの環境活動やSDG'sと同じように見られるのが嫌だったので距離を置いていたのですが、元きのこカメラマ ンの伊沢正名さんという方が書かれた、「くう・ねる・のぐそ―自然に「愛」のお返しを」という本を読んだことで環境問題に 対する自分なりの答えを探し始めました。 人間が汚い、見たくないと思っている排泄物は小動物や菌類など他の生き物にとってはご馳走で、山で野糞をすること が自然にとっての一番の恩返しだ、と伊沢さんは説いています。 同様にマイナスな価値の漂流物やゴミたちもアート作品として蘇ることでゴミに命を宿せれたらなと思っています。 (環境活動やSDG'sがダメだという訳ではなく、企業や地方自治体の中にはとりあえず「環境活動」「SDG's」をうたって お金を回すことで、本来人類の延命の為であるはずの活動を短期的で逆に人類の寿命を縮めかねないものに歪曲して しまっていることがあります。) Q8 若い世代の人たちに活動を通して伝えたいことはありますか? A8 産業革命以降モノづくりは大量生産効率化の一途を突き進んでいるのですが、人類の発展と共に排出されるゴミも増 え、ゴミアートはその負の部分を皮肉る様に一つ一つ違う形のゴミを集めて組み合わせながら作る、という真逆の行為 を行っています。 そういったみんなが目を背けたくなるような行為の中に時々転がっている新しい価値を発見することは結構楽しいです。 また結果のみを求められる世の中において、僕の作るアートは完成作品だけでなくみんなでゴミを拾って作る過程も含 めてアートだと思っています。 Q9 今後の活動の展開はどのようにお考えですか?また、夢などあればお聞かせください。 A9 夢は「太平洋ゴミベルト」に行くことです。 「ゴミベルト」という世界中の様々な川から海へ流出したプラごみが海流の影響で延々に渦巻いている場所が世界の海 に5箇所あるらしく、その中でも「北太平洋ゴミベルト」と呼ばれ、もしかしたら日本のゴミが流れるいているかもしれない 海域のゴミを拾いに行って、そのゴミで作品を作りたいです。