「創発展 vol.1」伊藤遠平/高あみ
'emergence vol.1' Enpei ITO / Ami KO
2008年6月4日(水)〜28日(土)

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左:伊藤遠平「無題」2008 キャンバスに油彩 73×60.3cm
右:高あみ「すばらしい日々」(部分)2008 陶 サイズ可変
©Enpei ito and Ami Ko


YUKARI ART CONTEMPORARYでは新進気鋭の若手作家を選び、作品を発表してもらう“創発展”をシリーズ化して開催することになりました。第1回目の今展は伊藤遠平(いとうえんぺい)と高あみ(こうあみ)の競演です。

東京芸術大学と同大学院で油画を専攻した伊藤は修了後、純粋にものをつくる喜びを再確認したいと願い自身が思い描いた物語の世界を石粉粘土で立体化し、実際の空間に配置する作品を制作していました。しかし3年ほど前、たまたま目にしたピカソの画集のとある一枚の絵を見て強い衝撃を受け、それまで気づかなかったピカソのすばらしさ、絵画のもつ力に深く感動したことをきっかけに「自分ももう一度絵画という表現で人の心に強く訴えられるものを作りたい」と思うようになったそうです。今展では絵画作品を中心として立体作品も発表する予定です。

高あみは女子美術大学大学院在籍当時から石膏を中心とした人体彫刻を主に制作してきました。常に物語が背景にあるような人々、日常の気配のある作品をつくるのを得意とする高ですが、その一方で自分の体重分の陶片を各地に分散したものの記録をとった「骨のプロジェクト」(2005)や日本に生まれ韓国籍をもった自身のルーツや家族を題材にした「北朝鮮で韓国でアメリカなうちの家族」(2006)、作家の母から送られてきたダンボール箱を石膏で抜いたものの集積「mother」(2007)などコンセプチュアルな作品も発表してきました。今展では人間の根源的
な営み、毎日の生活の素晴らしさを純粋に表現した小さな陶を大量に並べたインスタレーションを行ないます。

「創発(そうはつ、emergence)」とは「部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が全体として現れること」を意味する新しい言葉だそうです。タイプの違うふたりの作家の個展を同時にご覧いただくことで個々の作家が意図した以上の何か、共通する意識、時代背景などを読み取っていただけたら幸いです。

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